春先は新年度の年間計画のみならず、向こう3か年や5か年を見据えた中期・長期経営計画を、企業が対社内、対社外に対して明らかにしていく時期です。
3月期決算企業の2013年度第3四半期の決算発表が概ね終了しました。
トヨタ自動車が第2四半期発表時点での年間予測数値に対して、営業利益で2,000億円、当期純利益で2,300億円上方修正するなど、企業の好決算基調は相変わらず続いています。
一方で、円高是正や消費税増税前の駆け込み需要といったプラス要因が落ち着く2014年度以降にあっても、中長期にわたり確固たる業績の改善を企業は示すことができるのでしょうか。
この2014年度以降が、多くの日本企業にとっての本当の正念場になっていくと言えるのでしょう。
中期経営計画はなぜ必要か?
中期経営計画を作成・開示する意義を3つ挙げてみます。
1つめの意義は、
「上場企業であれば、広くステークホルダーに対して自社の方針を示すことは、パブリック・カンパニーとしての責務である」
ということです。
株主はその企業の株を持ち続けるのか、銀行はどこまで融資ができるのか、顧客はその企業が信頼に足る企業なのかなど、それぞれにとってもっとも大切なステーク(=利害)について意思決定するために、企業からの中期計画の開示を望んでいます。
中期計画を作成・開示する2つ目の意義は、
「もう1人のステークホルダーである社員のため」
です。
経営と社員が一体となって大きな目的を達成するためには、その道しるべとなる中期計画の存在は欠かせません。
全体像が見えない中でただ目の前の仕事だけをこなす状況であっては、短期的には成立しても、長期的な社員のモチベーションと成果に結び付けるのは容易でありません。
そして3つ目の意義は、
「中期経営計画の最終責任を負う経営者自身のため」
です。
中期計画は経営者自身の経営の意思表明です。中身を作るのも、それを遂行するのも、結果の責任も、すべて最後は経営者のものです。
企業30年説どころか、今や毎年のように目まぐるしく環境が変化する時代です。
だからこそ大局を失わないために、長期的に自社が目指すビジョンと、それを実現するための中期経営計画を明確にして、ステークホルダーたちの信頼を勝ち取ることが望まれていくのです。
経営戦略に基づいて経営指標を選ぶ
中期経営計画では、全社戦略と個別事業の戦略や課題を語った後に、自社が目指す会計数値を具体的に伝えるのが一般的です。
どんなに優れたマーケティングのアイディアでも、最後は収支の予測を行ってから実行されるように、中期計画でも最後は数値で具体化しなくてはいけません。
そこでは、売上高、営業利益、キャッシュフローなどの金額に加えて、ROE、ROA、EBITDAマージンなどの経営指標とそれらの数値目標を掲げるのが一般的です。
その際、もっとも気を付けておきたいことは、採用する経営戦略が選択する指標を決めるということです。
その両者に整合が無ければ、のっけから信頼のおけない計画と判断されます。
米ウォルマートが目標とする経営指標は?
米国スーパーマーケットチェーンのウォルマートは、特売を行わず毎日低価格で販売するEDLP(Everyday Low Pricing)を経営戦略として掲げ、世界最大の小売り企業に成長しました。
たとえば、もしこの企業が、売上高総利益率の向上を目標にしていたらどうでしょう。
顧客に低価格商品を提供することが戦略でありながら、目標が総利益率の向上では何ともちんぷんかんぷんです。
万一その企業の売上高総利益率が本当にグングンと上がっているなら、それは戦略がうまくいっていない(高いものしか売れていない)可能性が高いのです。
実際にはウォルマートの売上高総利益率は小売業としてはかなり低めの24~25%程度で安定推移しています。
低価格によってスケールメリットを追求することで、販管費を相対的に抑制していくこと。
EDLPが戦略であれば、「売上高販管費率の低減」が、1つの有効な経営目標として機能するでしょう。
このように、目標指標があって経営戦略が決まるのではありません。
経営戦略があって初めて、目標とする指標が定まるのです。
オオツ・インターナショナル主催セミナーのご案内
最後に、中期経営計画の作成に役立つセミナーのご案内です。
3月22日に、
『【会計Biz塾1日セミナー】ケースで学ぶ戦略的な経営指標の選び方』
を開催します。
企業が中期経営計画においても活用する機会の多い代表的な9つの会計指標を採り上げ、各指標ごとに、
- その指標を目標に掲げる意義
- 指標を高めるための具体的な施策
- 経営指標を戦略的に活用する先進企業のケーススタディー
について徹底解説していきます。
加えて、当日配布する「経営目標設定マップ」を基に、自社にとって最適となる経営指標(KPI)を設定する演習を行います。
新年度からの具体的な企業・事業戦略、経営目標の設定において、当セミナーは有益な示唆を得る機会となるものです。
詳細はこちらよりご参照ください。
信頼を勝ち取る中期経営計画作成のために、1日集中セミナーによって、パワフルな思考アプローチを身につけてください。