リクシル藤森社長

継続して起きる、外資系トップから日本企業トップへの就任

カルビーの松本晃氏(元ジョンソン&ジョンソン)、資生堂の魚谷雅彦氏(元コカ・コーラ)、ベネッセの原田泳幸氏(元マクドナルド)、そしてリクシルの藤森義明氏(元GE)。

外資系の日本法人でトップを張り、優れた実績をあげた経営者が、伝統ある日本企業のトップに突然就任し、企業改革を起こしていく。

過去にはなかったこうした動きが、最近富みに増えてきています。

 

背景として、国内市場の急激な変化と、企業のグローバル化推進において、これまでの企業内昇格では間に合わない、という点が挙げられます。

だとすれば、この傾向はおそらく今後も継続していくものと思えます。

これら4社にしても、国内市場の成熟や急変から業績が伸び悩み、またグローバル化においても道半ばの状況の下で、抜本的な突破口を築くための大きな意思決定を行ったと見受けます。

そんな中、日経ビジネスの「経営教室」にて、5月12日号から全4回に渡り、登場されたLIXILグループの藤森義明社長兼CEOのことばに注目してみることにしましょう。

 

リクシル・藤森社長のことばに見る、高い目標を設定する意義

 

「経営教室」の第1回では、

「ビジネスは結果がすべて。勝負は常に勝ち続けなければなりません。」

「GEに限らず、リーダーはこの強烈なプレッシャーに打ち勝たなければならないのです」

といった、強い意志が語られています。

 

藤森社長を大抜擢した創業家一族の前社長も大英断ですが、それを受ける藤森社長にとっては、たとえGEで実績を残されていても、最終的な評価はリクシルでの実績になるという、それ以上の大英断です。

 

第2回では目標の設定水準について、

「頑張って背伸びをすれば届く目標。GEではそのような生半可な目標は一蹴されます。」

「自分が跳べると思う高さの3倍を掲げろ」

とあります。

 

GEでもリクシルでもこうした目標設定を「ストレッチ」と呼ぶようですが、社員だけに与えるのではなく、トップである自らにも高い目標を課すとしています。

そうして打ち立てたリクシルの経営目標が、第4回で語られています。

 

2020年に売上高3兆円、海外売上高1兆円、営業利益率8%

 

藤森社長が就任された2011年の海外売上は400億円なので、9年で25倍にするという訳です。

 

「従来のやり方を否定しなければ前へ進めない」(藤森氏)環境へと追い込んでいきます。

 

戦略を具体的に語る

ではこれら数値を具体的にどうやって達成していくのか。

5つの戦略として

1 国内コア事業のシフト ⇒ リフォーム市場

2 グローバル事業の拡大 ⇒ 新たな市場への進出

3 広範な流通の有効活用 ⇒ 事業ポートフォリオの拡張

4 コア周辺事業の拡大 ⇒ サービス事業

5 経営効率の改善 ⇒ コストシナジーの追求

を掲げています。

 

リクシルの中期経営計画を見ると、それぞれの具体的な施策が、数値と共に開示されています。

 

詳細については、リクシルのHPより、直接ご覧ください。

 

死語ではなかった、コミットメント経営

2013年に発表されたリクシルの中期経営計画の資料の中で私の目をひいたのは、

「売上高3兆円と営業利益率8%達成にコミットする」

の1文でした。

一時期は日産のゴーン社長を初めとして多くの経営者が使った「コミットメント経営」。

ところがその後のリーマンショック等によって大部分が未達に終わり、過度なコミットメントは対外的には表明しない傾向が強くなっていきました。

私の理解する限りでは、「コミットメント」のことばが中期計画に表れる機会はリーマンショック以降、格段に減ったものと推察します。

これを藤森社長が中期経営計画という公式の資料の中で宣言しているのが、私にとってはとても新鮮な発見でした。

 

「経営教室」第4回で藤森社長は、

「営業利益率は現在8%を掲げていますが、私としてはその先を見込んでいます。10%、いや、倍の16%です。あくまで見据えているだけですが。」

また、グローエ(リクシルが今年1月に出資したドイツの高級水栓金具大手)が低価格帯のブランドでも16%の営業利益率を達成している事実を挙げて、

「グローエにできるのなら、ほかの企業にだってできるはずです。実現できているものがあるならば、高い値に合わせて目標を設定する。それをしなければ今後勝ち残れません。」

と、語っています。

3兆円と8%を、「目指す」ではなく、「コミットする」と表現した藤森社長。

こうしたことば1つからしても、藤森社長の不退転の決意を感じさせられるのです。

同時に、外資系トップを張る人材の生き様を示し、グローバル市場で戦う以上は伝統的な日本企業もそうした強い意志を持たなくてはいけないという、日本企業に対する藤森社長の強いメッセージであるように受け取りました。

 

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