昨年出版しました「ビジネススクールで身につける会計×戦略思考」(日本経済新聞出版)に続いて、本年も新たな書籍を出版します。

企業価値向上のための経営指標大全」(ダイヤモンド社)です。

数多くの経営指標の中から、自社はどれを選択し、具体的な目標数値をどう設定したうえで、企業活動に邁進していくことが求められているのか。本書はこうしたテーマに対して正面から向き合い、読者の企業経営における示唆を与え、持続的な企業価値の向上に寄与することを目指したものです。

会計の役割は過去の決算書を報告すると同時に、将来の経営計画を語るための中心となる言語です。このことを身近な企業ケースを使ってわかりやすく伝えたい。そうした思いで、2005年9月に本書の前身となる『企業価値を創造する会計指標入門』をダイヤモンド社から出版しました。私にとっては最初の書籍であり、はたしてそうしたニーズが書籍に存在しているのかすら半信半疑ではあったものの、おかげさまで2021年までの16年という長い歳月にわたって継続的に重版を続けることができました。

企業経営者に始まり、経営企画、IR、財務・経理といった経営指標に業務として携わる方のみでなく、一段高い視座に立った会計を学ぶ書籍として、営業や製造、研究や広くコーポレート部門の方々に至るまで購読いただけたことは、筆者冥利に尽きます。この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。

前著の刊行から今日までの間に起きた一連のコーポレートガバナンス改革によって、経営指標を設定し、対外的に打ち出す環境は、16年前に比べて明らかに高まりました。

最新の経営指標、最新のケース事例を最大限に活用して、「経営指標大全」の名に恥じない書籍になるように、9カ月をかけた執筆活動をようやく完走し、2022年1月の出版の運びとなりました。

ケーススタディのほんのいくつかの事例を示します。

 

  • 製造小売業が卓越した事業モデルを伝えるのに最も適した経営指標はROAである。本書では、ROAを実際に経営指標として掲げるニトリホールディングスをケーススタディとして取り上げている。
  • EVAがソニーグループの失墜を招いたと揶揄されることも多かったが、EVAと同じ目的を持つROICによってソニーグループは復活を果たした。経営指標はその選別とともに、導入のプロセスが問われることを暗示する事例であろう。
  • 競争激しく薄利が常態化していた菓子業界にあって、カルビーCEOに就任した松本氏が掲げた「売上高営業利益率15%」目標には、どういった勝算が隠されていたかを掘り下げてみたい。
  • 製造業の多くがCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の短期化を掲げるが、成長著しいキーエンスは、CCCの長期化によって、高い収益率を実現している。P/LとB/Sの両者に目を向ける大切さを示す好事例であろう。
  • 「キャッシュフロー経営」と呼ばれて久しいが、その中身についてあまり具体的でないのが日本企業の実態である。米国優良企業であるアマゾン・ドットコム、プロクター&ギャンブル、3Mなどが、キャッシュフロー経営をどのように指標化しているかを通して、日本企業の「キャッシュフロー経営」への一石を投じたい。
  • イオンモールのケーススタディからは、DEレシオや自己資本比率といったB/Sのみに着眼した指標から、有利子負債とEBITDAとの比較による財務健全性の評価指標へのシフトについて考察を図る。

 

 

読者が所属する企業の発展のみならず、本書を通して1人でも多くの方の今後のキャリア形成における力となれば、著者としてこの上のない喜びです。

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